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手術撮影用滅菌カメラ(2018年版)

手術時の撮影に関する話題です。 現在(2018年11月現在)使用している手術用カメラのシステムを紹介します。 デジタルカメラ本体(SONY Cyber-Shot RX-100V (DSC-RX100M5)) ウォータープルーフケース SONY MPK-URX100A リングライト LPL LEDマクロリングライト VLR-490S もしくは、 Aputure Amaran LED リングライト HC100 ちなみに、上記製品はすべてAmazonで購入可能です。 SONY RX-100Vは、Pモードで撮影した場合、F値が低く設定されるため、被写界深度が浅くなります。↓の写真のように、F2.8で撮影した場合、画像中心の骨折部にのみフォーカスが合っていますが、周辺部はぼやけています。 トイプードル橈骨骨折部: Pモード  f/2.8  1/50s  +0.3  ISO-500 あるいは、周辺部にフォーカスが合ってしまった場合、中心部分の関心領域がぼやけてしまいます。 トイプードル橈骨骨折部: Pモード  f/2.8  1/50s  +0.3  ISO-640    そのため、Aモード(絞り優先)で撮影する必要があります。 トイプードル橈骨骨折部: Aモード f/11,  1/50s,  ISO-1000 しかし、ウォータープルーフケースに入れた状態ではダイヤルを回転させてF値を変更させることができません。ですから、Aモードで撮影する場合には、あらかじめF値を高めに設定しておいて、撮影しながら露出時間のみ調整するか、MRモードにいくつか異なるF値の設定を記憶させておくのがいいと思います。 小型犬のTPLO手術時: Aモード f/9,  1/80s,  ISO-400 小型犬の前十字靭帯断裂: Aモード f/9,  1/80s,  ISO-500 接写性能評価(マクロレンズなし) 本体のみで可能な限り接写して撮影。Aモード f/7.1,  1/40s,  ISO-400, 焦点距離13mm DSC-RX100M5の接写性能はあまり高くなく、この程度が限界。 接写性能評価(マクロレンズあり) Aモード f/7.1, 

手術用カメラに求められる条件

手術用カメラの話題です。 私はCanonのカメラが好きです。なぜCanonのカメラが好きかというと、「おまかせモード」もしくは「P:プログラムオート」で十分きれいな画像が撮影できるからです。 私にはカメラの知識はほとんどなく、F値とか絞りとかよくわかりません。 手術中の記録ですから、アートの要素は必要なく、目の前の被写体を見える色、形そのままに撮影したいのです。 手術用カメラに求められる条件 1)「プログラムオート」で撮影した時の画質、色合い、被写界深度が十分であること。 手術時は無影灯の強い照明下で作業しており、目がその強い明りに慣れてしまっています。手術中にデジカメの液晶画面で撮影した画像をチェックしようとしても、詳細まで十分確認できませんし、時間的余裕もありません。一度撮影してみて、暗いと感じたら露出を変更して再撮影したらOKくらいの操作感で、手術後に確認したら「なかなかきれいに写っているな」と思えるような画像を得たいものです。 また、奥行きのある構図で周辺部がボケすぎるのも困ります。できれば構図内のすべてでピントが合っていてほしいです。そうじゃないと、写っているものに対する正確な所見が残せません。 ↑Canon Powershot S110  f/4  1/40s  ISO-80 プログラムオート 小型犬の膝蓋骨内方脱臼手術時に撮影した写真。 前十字靭帯に異常がないこと、大腿骨滑車溝や外顆の関節面に異常がないこと、内顆の関節面の一部と膝蓋骨の関節面は光沢が失われていること、膝蓋骨近位内側に血管新生が認められること、関節包はそれほど肥厚していないこと、骨棘もほとんど形成されていないこと、などが確認できる。 2)その機種に対応したハウジングが販売されていること。 水中撮影用のカメラハウジング(カメラケース)を滅菌して利用することになりますので、ハウジングが販売されていることが条件です。 困ってしまうのは、モデルチェンジのタイミングでハウジングも販売中止になる機種がほとんどのため、1年後2年後にハウジングを買い替えようと思ってももう売っていないことです。1年くらい使用していると、ガス滅菌の影響でハウジングが劣化してきます。買い替えようかなと思ったら、もう純正ハウジングは販売していない、なんとかサードパーティ品が見つかった

オートクレーブ滅菌可能な手術用カメラハウジングの開発

手術用カメラに関する話題です。 術者が手術中にデジカメで撮影するならば、やはり滅菌可能なハウジングを利用するしかないという考えに至りました。 私はCanon Powershot S120を気に入って使用していたのですが、生産中止となりました。 メーカーは後継機種のリリースも止めたので、Powershot S100シリーズは廃盤となりました。 カメラ自体が生産中止となると、ハウジングも当然ながら入手が困難となってきます。 かねてから、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)可能なハウジングを作りたいと考えていました。 株式会社フィッシュアイ( http://www.fisheye-jp.com/ )さんに相談しましたところ、Nauticam製品をベースに改造をおこない、樹脂パーツなどを耐熱材に組み替える方法でオートクレーブ可能なハウジングを製作することができました。 制作費用は高かったです。本体価格の3倍くらいの費用がかかりました。実際にオートクレーブしても問題なく使用できましたが、50回くらいオートクレーブを行うと、ゴム部分の劣化や樹脂の変形(気泡の発生)がみられてくるので、それらの消耗パーツは定期的に交換する必要がありそうです。 オートクレーブできるということは、1時間程度で滅菌可能ということです。1日の手術でくり返し使用することも可能となります。これはとても便利じゃないかと考え、キャノンにこのような商品開発をしてくれないかとメールをおくりましたが、あっさり断られました。通常、人付き合いを考えて、いきなり断ることはためらいますが、興味のないことには第一段階で強くシャットアウトしたほうがいいということを学びました。  

手術撮影用カメラのガス滅菌について

手術用カメラの話題です。 以前のブログでPENTAX Optio WG-2や、OLYMPUS Tough TG-1など、防水対応したアウトドア用デジタルカメラをそのままガス滅菌処理を行い、手術中に使用する方法を紹介しました。10回程度この方法を繰り返した結果、不具合が見つかり始めました。結果的にはあまりお勧めできる方法ではありませんでした。 実際に経験した不具合 1)Canon PowerShot S100のレンズが動かなくなった。 →修理に出したところ、「内部ギヤに錆などが発生し、固着していた」とのことでした。EOG滅菌では、その成分の一部が結晶化して、対象物に付着するものと考えられますので、デジタルカメラなどをそのままガス滅菌するのは故障の原因となることが分かりました。 2)PENTAX Optio WG-2の液晶パネルが変形した。 →上記の経験から、防水仕様のデジタルカメラのであれば、内部へガスが侵入することはないだろうと考え、PENTAX Optio WG-2をそのままガス滅菌してみました。その結果、液晶画面が内側へ凹むように変形してしまいました。バッテリーなどを収納している蓋を開けた瞬間にプシュッと空気が流入して液晶画面の変形は元に戻りました。どうやら、ガス滅菌の行程で陰圧環境となり、その時に防水デジタルカメラの蓋を密封しておくと気圧差が生じて液晶パネルなどの変形を引き起こすようです。 3)OLYMPUS Tough TG-1の電源が入らなくなった。 →上記の経験から、OLYMPUS Tough TG-1の蓋を一部開けたままガス滅菌することにしました。OLYMPUS Tough TG-1は鏡筒を持ちませんので、内部でレンズは動きません。これなら大丈夫ではないかと思ってガス滅菌を行いましたが、何回かガス滅菌を実施しているうちに電源のON/OFFの動作がおかしくなってきました。やはり、ガス滅菌成分の結晶が基盤に悪影響を起こしているのかもしれないと考えました。 このような経験から、デジタルカメラ本体をガス滅菌する方法は採用できないとの考えに至りました。 最近使用しているデジカメはSONY RX100Vです。これをメーカー純正ハウジングMPK-URX100Aに入れて使用しています。EOGガス滅菌を繰り返すと、約1年(滅菌回数約8