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11月, 2012の投稿を表示しています

症例:頸部椎間板ヘルニア

ビーグル、7歳、9.1kg 主訴: 頸部痛 症状: 頸部の痛み、体のこわばり 経過: 2週間前から疼痛症状が出て、背中を丸めてじっとしている。抱こうとするとびっくりしたり、疼痛から泣き叫ぶこともある。以前にも同じような症状が出たことがあったが、そのときは鎮痛剤を服用し、1週間ほどで改善した。  初診時(術前)の様子。頸部~肩の周囲の筋肉が、ピクッ、ピクッと痙攣しています。 呼吸も速く、疼痛を我慢している様子です。 MRI T2WI Sagittal: C2-3に椎間板ヘルニアを認める。圧迫は軽~中程度。 MRI T2WI Axial: 左右への偏位はなく、脊椎管床に広がっているように見える。 CT Axial: 逸脱した椎間板物質が石灰化している場合、CTのほうが描写性が高い。 診断:C2-3椎間板ヘルニア、軽~中程度の圧迫。逸脱物質に左右の偏位は見られない。 術式:ベントラルスロット(Ventral Slot) C2-3の腹側へアプローチ スロットの作製、初期段階 気管、食道、反回神経、その他周囲組織の傷害を避けるために、私の場合、術野を濡れたガーゼで保護し、ゲルピーは5分に1回解除しています。皆さんはどのようにしていますか? スロット作製後、椎間板物質の摘出 私の場合、まず直径2.5mmのラウンドバーで小さめにスロットを作製してから、その後必要に応じて拡大しています。そのほうが、静脈洞からの出血を回避しやすいのではないかと考えています。また、ベントラルスロットは椎間板を一部破壊してしまう手術方法なので、椎間の連結力を維持する上で、スロット形状はできるだけ小さいほうが理想的と考えています。  術後レントゲン。椎体中央に作製したスロットの輪郭が見えます。   術後2日目の様子。疼痛は十分に緩和されているようですが、まだ術後鎮痛剤(フェンタニール・パッチ)の効果が残存しているので、安心はできません。四肢の動きに違和感はなく、食事も可能です。   術後9日目の様子。術後疼痛症状の再発はなく、経過は順調です。そろそろ退院です。 注)頸部椎間板ヘルニアの手術(ベントラルスロット)を安全に行うためには、専門の知識、経験、技術を必要とし

症例:環軸椎亜脱臼

トイ・プードル、雄、6ヶ月齢、体重3.4kg 主訴:歩様失調 症状:歩様失調、四肢の姿勢反射低下。 経過:飼いはじめた頃から、なんとなく歩き方がおかしいと思っていたが、1ヶ月ぐらい前から後肢がふらつきはじめ、フローリングなどでは滑ってしまう。 手術直前の様子。起立、歩行可。明らかな頸部痛なし。 ステロイドを処方した後、症状の改善が少し認められたとのことでしたが、下記MRI検査などから重度の脊髄圧迫が認められたため、外科的治療を実施しました。  初診時Xray 頸部ラテラル像  環椎-軸椎関節の亜脱臼が認められる(矢印)。  3DCT画像 軸椎の歯突起(矢頭)が分離している。 MRI T2WI Sagittal 背側に変位した軸椎が重度に脊髄を圧迫している(矢頭)。 手術時所見:Kwireを6本挿入し終えた状態。 術後Xray 頸部ラテラル K-wireおよび骨セメントにて環軸椎を整復固定     術後Xray 頸部DV 使用したピン 軸椎から環椎への経関節ピンニング:直径1.1mm K-wire x 2本 環椎へのアンカー用:直径1.1mm K-wire x 2本 軸椎へのアンカー用:直径0.9mm K-wire x 2本   脱臼の状態および環軸椎の形態学的特徴が症例ごとに異なるため、手術方法は状況に応じて判断していますが、私の場合、スムースピンを6本使用した腹側固定法を選択する場合が多いです。      術後3日目の様子。起立、歩行可能、食事も可能。これから術後2週間、安静入院です。術前の状態が良好でしたので、術後の回復も早期に認められました。       注)犬の環軸椎亜脱臼の整復手術を安全に行うためには、専門の知識、経験、技術を必要とします。また、骨セメントに細菌が感染すると、重篤な合併症を引き起こしますので、極めてクリーンな手術室環境が求められます。