スキップしてメイン コンテンツに移動

3Dプリンタで骨モデルを作製する方法 1

3Dプリンタの話題です。

最近、3Dプリンタを用いて骨格モデルを造形する方法について質問を受ける機会が増えてきましたので、私がよく利用している方法について解説します。
まずは、CT検査データ(DICOM)から骨格データを抽出し、3Dプリンタ用データ(STL)へ変換する手順を解説します。


用意するもの
1)CT検査データ(DICOMデータ)
2)MacOSパソコン(HorosやOsiriXを使用する場合)
3)DICOMビューワー(HorosやOsiriXなど)


1)DICOMビューワーを使って、3次元画像を構築する。

Horosを起動すると症例一覧の画面になります。
症例を選んでダブルクリックすると、↓の画面になります。この時点では2D断面を閲覧できます。これを3D画像に再構築していきます。















「3D Viewer」バナーから、「3D Volume Rendering」を選択します。


3DCTを構築する画像ビューワーとしてOsiriXが有名です。最近のOsiriXはフリー(無料)バージョンで使用できる機能がかなり制限されていますので、有償版にアップデートしたほうがいいと思います。とりあえずどんなことができるのか無償バージョンで試してみたい場合には、Horosの利用がおすすめです。



2)骨格データを描写する
「3D Volume Rendering」により、↓のような3D画像が現れます。



























この段階では、皮膚や筋肉などの軟部組織も描写されています。
CT値のしきい値(WLやWW)を変更して、骨のみが描写されるように調整します。
この調整には、一番左の、グレーの濃度を調整するようなボタンを使用します。
左クリックしながら、マウスの上下、左右させて調整してください。骨がきれいに描写される条件は一律ではなく、症例の体格やCT撮影条件、再構成係数により変化します。


下の画面ではWL:106 WW:93です。上下と左右を交互に操作しながら、できるだけ骨だけ抽出されるように調整していきます。やっているうちに描写がうまくいかなくなってしまうことがあります。これはWLかWWの値が大きくずれてしまっていることによるものですので、一旦初期の状態かWL:100 WW:100くらいに戻してから再調整してください。




























3)不要な部分を消去する
次に、必要な領域を抽出し、いらない部分をカットしていきます。


ハサミマークのボタンを選択し、対象の範囲を指定していきます。その後、Enterを押すと領域内が抽出(領域外が消去)され、Delateを押すと領域内が消去されます。




























3Dプリンタで造形したいエリアが決まっている場合は、その領域を指定してその他不必要な部分を消去します。今回は右後肢を選択してみます。範囲を指定して→Enter。



























4)STLデータへエクスポートする。
3Dプリンタで造形したい領域を抽出できたら、次に、3Dプリンタ造形用のファイル(STL)へ変換していきます。





3D Viewer から 3D Surface Rendering を選択


サーフェス・レンダリングに変換していくうえでの設定です。今までの経験から、↑のような設定が比較的無難かと思っていますが、必勝パターンではありませんので、個々の症例でいろいろな条件の組み合わせを試してみてください。
特に重要なのはPixel valueです。300くらいが骨の閾値ですので、この数値くらいから始めて、骨の軟らかい部分などが抜けてしまい穴ボコが空いてしまうような場合には250→200→150と代入する数値を下げて確認していきます。数値を下げすぎると軟部組織の形状も抽出してしまうので注意して調整しながら適切な値を見つけてください。OKボタンを押してもなぜか反応しないときがありますので、Pixel valumeを代入して→Enter押すのがいいと思います。



















目的とする造形デザインが抽出できたら、Export 3D-SRから STLファイル形式にてエクスポートします。


まとめ)
STLデータは3Dプリンタなどで使用するファイル形式の標準的な形式です。ここまでの作業ができれば、後は実際に造形する3Dプリンタのアプリに読み込ませれば造形スタート可能です。
個人で3Dプリンタを所有していない場合、外注することになりますが、そのような場合にもここまでの作業を自分で行うことができれば、造形範囲を正確に指定できますし、納期も最短になり、コストダウンにもなります。

最近では、DMM.comはじめ、3Dプリンタ造形を受注している企業が増えてきました。使用するマテリアルにより値段が変わりますが、骨モデルにはナイロンの白色があっているように思います。

















 











このブログの人気の投稿

手術撮影用のビデオカメラ

手術中の動画撮影に関する話題です。 私は手術の様子をカメラだけでなく、ビデオでも撮影しています。また同時に、その映像を手術室内の大型ディスプレイに映写しています。私が手術の動画を撮影するようになったきっかけは、実習中の学生になるべく手術を見て興味をもってもらいたかったからです。手術の細かい内容は周辺からでは見えにくく、遠巻きに見学してるだけでは退屈かもしれません。あるいは、手術しながら説明する場面では、術者が見ている様子そのものを見てもらうのが効果的と考えました。 医療用として販売されているビデオカメラシステムは数十万円から数百万円する高価なものばかりで、とても個人で購入できるものではありません。近年のビデオカメラの進化はとても早く、ハイビジョン画質がいつの間にかフルハイビジョンに、そして今では4K画質から8K画質にまで向上しています。一般的に販売されているビデオカメラでどれくらいの画質の手術動画が撮影できるのかを検証してみたくなったのがきっかけで、このようなことに興味を持ち始めました。 手術中に動画撮影をする目的 1)教育用: 手術の様子を見学することで、教科書には書かれていない技術的内容(例えば、手の動かし方、器具の使い方、患肢の保持の仕方、ランドマークの見つけ方、など)に対する理解が深まります。術者目線で撮影されているとより一層効果的でしょう。将来的には3D撮影もしてみたいです。 2)記録用: 手術動画が記録用として保存されていると、何か理由が発生した際にいつでも内容を確認することができます。手術はコンサートや運動会と同じように、1回きりのイベントです。その時に撮影しておかないと、2度目のチャンスはありません。私は2TBのHDDに動画をコピー保存していますが、FHD(フルハイビジョン)画質で約150件くらいの手術動画(1~3時間/件)を記録できます。 3)ライブビュー用:本学の動物医療センター手術室には大型ディスプレイが設置されており、手術の様子をライブビューで観察できるようになっています。このような環境を整えることで見学実習生の学習効果がより高まると考えられますし、麻酔師やその他のスタッフにとっても手術の進行状況が確認しやすくなりました。 ↑現在、私が使用しているのはパナソニックのHC-VX980Mです。FHDで

手術撮影 OLYMPUS TG-5 (TG-6) 画像集

 2020年から、手術撮影用カメラとしてOLYMPUS TG-5を導入しました。 TG-5 (TG-6)の特長として顕微鏡モードがあります。他のデジカメでは手術時に神経や関節面、靭帯損傷部などを接写するためにはマクロレンズを使用する必要がありますが、OLYMPUS Toughシリーズの顕微鏡モードではマクロレンズを必要としません。画質もそれほど悪くありませんので、術中撮影用カメラとして2021年現在、一番使いやすいカメラだと思っています。 今回は、(有)エヌティエフさんに依頼してオートクレーブ可能な滅菌カメラケースを作成してもらいました。 TG-5で撮影した画像をいくつか紹介します。 猫・馬尾神経症候群・L7-S1背側椎弓切除を行い、露出した馬尾神経を観察。 猫の歯根膿瘍。歯肉から露出した下顎骨の一部。 猫の膝蓋骨骨折。関節面側から観察。 小型犬のベントラルスロット。 中型犬の前十字靭帯断裂