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X-ray Magnification Indicator 自作


レントゲン撮影時の話題です。

最近ではTPLO手術の件数が増えてきました。とくに小型犬での適応症例数が増えてきていますが、これは、パテラの内方脱臼と前十字靭帯断裂を併発している症例に対してTPLOを利用した場合の術後成績を評価しているからです。

TPLO実施時には、インプラントのサイズや配置、骨切りのラインを正確に作図して術前計画を練る必要があります。印刷されたレントゲン画像は、骨格の形状を正確に描写しているように見えますが、実は拡大されていることが多々あります。これは、一般的なレントゲン撮影台では被写体(患肢)とレントゲンフィルム(カセッテ、フラットパネル)の間が数センチ離れているため、、若干(10%前後)拡大撮影されてしまうのです。

そのため、骨格の大きさを測定する場合は、レントゲンフィルム(カセッテ、フラットパネル)の直上に患肢を載せるようなコンディションで撮影しないといけません。ただし、DRなどでは、プリントアウト時にパソコンとプリンターの相性でなぜか等倍印刷されないことがありますので、注意が必要です。

このようなことから、せいかくな測定が必要となるようなレントゲン撮影時には、長さの基準となるマーカーを一緒に撮影することが理想的です。



↑のレントゲンのように、レントゲンマーカーを一緒に入れて、撮影します。
これは、Biomedtrix社のX-ray Magnification Indicator (100mm X-RAY MARKER)で、鉄球間の距離を測って、実寸より何%拡大されているかを計算します。このレントゲンでは、108mmでしたので、8%拡大されていることが分かります。


↑Biomedtrix社の100mm X-RAY MARKER
それぞれの鉄球の左端から左端までの距離がちょうど100mmになっている。


知り合いの先生から、このレントゲンマーカーを貸してほしいと依頼がありました。日本国内ではこのような製品の販売が無いので、米国のBiomedtrix社にメールして購入しなければなりません。確かにちょっと面倒ですし、納品までに時間がかかりそうです。

そこで、なにかいい方法はないかと考え、タミヤの工作シリーズを思いつきました。


↑タミヤ 楽しい工作シリーズ(パーツ) ロングユニバーサルアームセット (Amazonでも売ってます。)

これは、直径3mmの穴が5mm間隔であいているプレートです。この穴に直径3mmのボールベアリングを入れれば、Biomedtrix社の製品に類似したものが作れるのではないかと考えました。



↑ベアリングですが、直径3mmのベアリング(鉄球、スチールボール)では若干すき間が生じてしまうことが分かりました。Amazonで検索していると、SHIMANOの自転車用ベアリングに1/8インチ(3.175mm)というサイズがあることを見つけました。これがちょうどよさそうです。興味のある人は「シマノ 鋼球 1/8」で検索してみて下さい。

↑左端の穴~右端の穴が10cmの位置となるようにユニバーサルアームをカットします。


↑1/8インチ鋼球を穴の上に置くと、若干サイズが大きいのですが、定規などを使って上からグイッと押し込むと、きれいぴったりにはまります。


↑5cmの位置にも埋め込みました。


↑なかなかいい感じです



↑最後に熱収縮チューブ(ELPA 収縮チューブ 透明 8mm)を使用してコーティングしました。



↑完成です。ユニバーサルアームとベアリングで合計1000円未満です。10センチのマーカーが4本作れますので、1本250円未満です。興味のある人は工作してみてください。

↑直径3mmの鋼球だと、このように若干の隙間が生じます。一番上の鋼球は1/8インチの鋼球のため、隙間がありません。

















































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